では日本での銃使用がどうか、想像できるだろうか。自殺者は14人、コロシは3件(このほかに、自殺かコロシか特定されないもの4人、不慮の事故が4人)である。その数はアメリカの1000分の1にも満たず、拳銃のドンバチが繰り広げられる刑事ドラマは、絵空事を描いているに過ぎないことがわかる。
それでは一体、日本ではどんな手段によるコロシや自殺が多いのだろうか。日本人はどんな死に方をしているのか、政府の統計からは「死」の実像が見えてくる。
厚生労働省は毎年、出生、死亡、婚姻、離婚などについて、その全数をとりまとめた数字を人口動態調査として公表している。死亡については、死因ごとの人数が年齢や場所など、さまざまな切り口から集計されていおり、自殺(統計上は故意による自傷及び自殺)もコロシ(統計上は加害にもとづく傷害及び死亡)もその数が明らかにされている。
ただし、16年の人口動態調査におけるコロシの数字は290人。一方で警察庁の統計では、895件発生していると報告されている。実際に起きたコロシ件数として正しいのは警察庁の数字の方であるが、人口動態調査におけるコロシは、医師が死亡診断書(死体検案書)を書いた時点で犯罪が明らかである場合に限られるので、全体の3分の1しか把握されていない。
日本におけるコロシの2大手口はクビを締めることと、刃物で刺すこと。この2種で7割を超えていることがわかる。興味深いのは被害者の男女比で、クビを締められるのは圧倒的に女性。一方、刺されたり、3位の暴力を振るわれたりするのは男性という傾向が明らかだ。
想像をたくましくすれば、体力差があれば、血を見なくて済む絞首を選ぶ、という心理があるようにも思われる。
さて、4位以下になると、被害者数は1ケタとなり、レアなコロシといえる数になる。
そのレアな手口のひとつが銃器であり、拳銃にライフルなどを含めても3人しかいない(先に触れたように、自殺かコロシか不明とするのが4人いる)。「移動中の物体の前への押し出し又は置き去りによる加害」とは、列車やクルマの接近を狙った突き落としだが、これもレアで1人だけ。「モーター車両の衝突による加害」は、故意にクルマなどを衝突させたケースになるが、これは2人。これらはサスペンスドラマには頻繁に出てきそうな手口だが、実際は滅多にない死に方といえる。
自殺はどうか。
自殺者2万1017人のうち、3分の2にあたる1万4481人が首つり。自殺者の7割が男性で、中心となる年齢層は40~60歳代だ(左図参照)。2位の「高所からの飛び降り」の7倍以上にも達する常套手段である。なお、この首つりの4分の3は自宅で行われている。
3位の「その他のガス及び蒸気による中毒及び曝露」は、毒性が強い有機溶剤、有機塩化化合物以外のガスで、主に一酸化炭素中毒を起こす、自動車の排気ガス、ヘリウム、燃料用ガスなどが対象だ。

乗用車の排気ガスもしくは車内での練炭などがあるためか、自殺の場所の15%が「街路及びハイウェイが路上」で発生している。
大都市圏の鉄道運行を混乱に陥れる飛び込み自殺(統計上では「移動中の物体の前への飛び込み又は横臥」)は、自動車などへの飛び込みも含めて542人、鋭利な物体(ナイフや包丁など)による自殺は517人と、いずれも1日に1件以上起きている計算になり、この辺りまでが、よくある手口としていいだろう。
かつての推理小説などでよく使われた睡眠薬などは191人、農薬が180人など、全体の数字からしたら1%未満で、服毒自殺はすでにレアな部類といえる。
本当にレアな部類に入れられる手口は拳銃、ライフルなど銃器で、合算しても14人だ。日本においては、自殺に使おうにも厳しい銃規制のため手に入れようがないことは言うまでもない。ほかには「鈍器」を使った自殺が2人いるが、一体どうやったら鈍器を自殺に使えるのか、想像が難しいケースである。
この統計には医療事故の項目もある。16年は42人。外科的及び内科的ケア時における意図しない切断、穿刺、穿孔又は出血が29人と一番多いのだが、「内視鏡検査時」、「外科的及び内科的ケア時における投与量の誤り」、「輸血又は輸液時における血液又はその他の液体の過剰」、「輸血に使用された不適合血液」と、素人目にもかなり粗忽なミスによる死者が、それぞれ1人ずついる。
もうひとつ、「合法的処刑」の項目もある。死刑執行のことで16年は3人だった。これは政府の公表数字と一致している。
「散々いじめてきた相手に懲らしめたい!」